法則3:自己イメージは実際の自分を上回る
誰でも「自分はこういう人間だ」という自己イメージを持っています。その自己イメージと現実の自分が一致していれば、その人は「自分をよく知っている人」だということになります。
しかし、たいていの人はじっさいの自分よりも高い自己イメージを抱いているものなのです。
つまり、理想化された自己イメージがあり、その自己イメージと現実の自分との間にはギャップがあるにもかかわらず、自己イメージのほうを本当の自分だと思い込む傾向があるのです。
そして、その自己イメージを「私はこういう人なの」「オレってこういう人間なんだ」と、他人に押し付けようとします。そうすることによって、周囲の人からそのイメージ通りの人間として扱われたいと望んでいるのです。
たとえば、「自分は有能でありたい、社会的に成功したい」という願望の強い人は、「自分は人より有能で成功するはずの人間だ」と思い込んでいるところがあります。
「自分の力でモノ、カネを動かしたい」という欲求の強い人は、現に自分が大物であるかのように感じてしまっていることがあります。そして、じっさいに、「有能でありたい」人はいかにも有能そうに振舞い、「大物でありたい」人は「オレは大物だ」といった態度を取ろうとします。
はたから見れば滑稽ですが、本人はそのことに気付きません。
現実の自分と自己イメージのギャップは、「自分はこうありたい」という欲求や願望からきています。人は現実の自分よりも、その欲求や願望のほうに合わせ、それが自分だと思いたがるものなのです。
けれども、それが思い込みに過ぎなければ、現実が伴わないために、「有能でありたい」人は見栄を張ったり自慢話をしたり、精一杯自分を膨らませようとするでしょう。
それでも効果がなければ、自分の地位を引き上げるために他人を見下そうとするでしょう。「オレは大物だ」と思っている人は、ありもしないお金を使ってみたり、大風呂敷を広げ、空威張りをして、他人を威嚇するようなことをするかもしれません。
私たちは職場や街中で、かなりの確率で、「大物ぶった小者」に出会います。
また、世の中には自分を特別な人間だと思っている人もいます。そういう人は、「特別扱い」されないと不満に思います。しかし、それは他人にとっては迷惑なことでしかありません。
当人が抱いている自己イメージと現実が一致していれば、その人は別に自己イメージを他人に押し付ける必要はありません。
自己イメージと現実にギャップがあるからこそ、「自分はこういう人間だ」と強調しなければならないのです。
このやり方で、ある程度までは人をだますことができます。が、やりすぎると対人関係に問題が生じてくることになります。
人間関係のトラブルは、「自分はこういう人間だ」という理想化された自己イメージを、他人に押し付けようとするところから生じるといっても言い過ぎではありません。
自己イメージと現実の自分との間のギャップが大きくなればなるほど、人は他人に対して支配的になり、倣慢になっていきます。他人に対して横柄な態度を取り、ますます自己イメージの押し付けを図ろうとします。
たとえば、たいして立派な人間であるわけでもないのに、自分は立派な人間だと思っている人がいます。会社である程度の地位についていた男性など、リタイアした後もまったくの他人に、そのころ自分が周りから受けていたような待遇を受けないと、「けしからん」とか「失礼だ」と憤るのです。
しかし、その人は現実には、たんに社会性のない迷惑な人間としかみなされないでしょう。
周りの人とトラブルを起こしているにもかかわらず、自分は人から尊敬されるべき人間であると思い込み、それに見合った扱いを受けなければ、文句を言って騒いだりするわけです。
そうなると当然、周囲の人は反発し、抵抗を示します。周囲の人は倣慢な人の思うがままに操られることはありません。
そこで、他人を操作しようとした人の目論見は失敗し、誰からも相手にされなくなってしまうのです。
悪魔の法則⇒「自分はこういう人間だ」と主張すれば、ある程度他人を騙すことはできます。周りの人間は本人が自分自身について言っていることをやすやすと信じてしまう傾向があるのです。人はイメージに騙されるのです。
天使の法則⇒その人が自分自身について言及していることが、その通りなのかどうかは、その人が言っていることではなく、その人がしていることを見れば明らかになります。言葉と実際行動の間にギャップがある場合、その人は自分を過大評価しています。あなた自身も言葉に実際行動が伴っているかどうか見られているかもしれません。