2019年6月11日(火)
腹から声を出せば 人を動かせる
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人を動かす声の出し方

 人を動かすにはどうしたらいいのでしょうか?

 ここでは人を動かすとは、文字通りの意味です。たとえば、目の前に人が立ちはだかっていて、その人にどいてほしいと思うとき。また、電車やバスに乗っていて、入り口付近が込み合っていて、自分が降りる駅や停留所に近づいても、なかなか降りられそうにないときなど。

 小さい声で「すみません」「次、降ります」と言っても、おそらく誰も気づいてくれないでしょう。込み合った電車やバスのなかでは、思い切って声を張り上げなければ、周りの人は道を空けてくれないかもしれません。

 私たちの声は頭のてっぺんから出るような声もあれば、腹の底から出るような声もあります。だいたい、早口でおしゃべりな人は頭のてっぺんから声が出ていることが多いものです。頭の切り替えが早いから、早口でおしゃべりになるのですね。

 一方、同じ頭から声を出している人でも、小さな声の人がいます。声が小さい人は、よく周りの人から「えっ、いまなんて言ったの?」「聞こえなかった」「もう一度言って」などと聞き返されるでしょう。

 それはその人の性格にもよるのですが、声が小さいということは自信のなさを表すものだと思われることもあります。たしかに、自信のないときには返事も小さくなるでしょう。

 しかし、もとから声の小さい人というのは、あまり腹のエネルギーを使えていないのです。意思を表明するには腹のエネルギーを使う必要があります。腹から声を出さないと、なかなか自分の意思を押し出すことができないのです。



 腹から声を出せば、人は道を開けてくれる

 目の前に立っている人に道を開けてもらおうと思えば、声をかけるのに勇気がいることがあるかもしれません。
こういうときこそ、人を動かすために腹の力を使うことです。

 たとえば、電車やバスを降りるときでも、思い切って腹に力を込め、腹から声を出して「すみません」「降ります」「通してください」といえば、周りの人は道を開けてくれるものです。

 腹から声を出すというのは、怒鳴るとか、がなりたてるということではありません。怒鳴り声というのは、腹のエネルギーがうまく統合されていないときの声です。腹のエネルギーが統合されていると、それこそお腹のそこから響いてくるような低く安定した声になります。本当に腹が据わっている人の声は、太く力強いところがあります。

 腹から声を出せば、ほんとうに人を動かすことができるのです。目の前にいる人に「ちょっと道を開けてください」といえばどいてくれるし、猫なで声でお願いしても何もやってくれない家族に、腹から声を出して「これやって」といえば、きっとやってくれるはずです。

 忙しそうな店員や受付係に、あなたのことを後回しにせず、即座に対応してもらうためにも、小さい声で遠慮がちに「すみません」と言ってみたり、甲高い声で「すみませ~ん」などと言っているのではなく、腹から声を出し、一言「お願いします」といえば、相手は「はい」と答え、あなたの思い通りになるでしょう。

 ただし、くれぐれもお腹から声を出すことと、怒鳴ることとを一緒にしないでくださいね。腹式呼吸でお腹から声を出すような練習をしましょう。運動やトレーニングも効果的です。ジムでトレーニングを終えた後や、格闘技家のエクササイズ、ヨガなどを行った後は、低くてよく通る声がお腹から出てくる感じを体験できると思います。


 他人に道をよけてもらったり、混雑したレストランで店員を呼ぶためだけではなく、もっと大切なことは自分の意思を通すために、腹の力を使うということです。

 たとえば、周りの反対を押し切って何かをやろうとしているときや、仕事などで、絶対にこれだけは譲れないというとき、腹から声を出してそのことを伝えれば、周囲の人はあなたの意思が固いことを感じ取るでしょう。それはあなたの自信とも受け取られ、あなたはもはや自分の意思を貫く以外には、進むべき道はなくなるのです。
 
愚かな選択→相手を説得したいときに、早口で言いたいことをぺらぺらしゃべる。理屈をこねて相手を納得させようとする。しかし、それでは自分のペースに相手を巻き込んだつもりでも、れでは相手はただうまく煙にまかれただけのように感じ、とうてい心からは納得しないだろう。
 腹のエネルギーを押し出すことと、ただただ大きい声で怒鳴ることを混同し、大声で相手に言うことを聞かせようとする人は、ただただ粗野で強引な人という印象しか持たれない。相手はむしろ反発し、抵抗が大きくなる。

賢い選択→自分の意思を伝えたいときは、深く呼吸をし、呼吸を落ち着かせ、腹のエネルギーとつながる。落ち着いて腹から声を出し、相手にその意思を伝える。早口にはならない。相手は本気なんだと感じる。変わらない意思は相手を譲歩させる。腹の底から出る声は、その意思が強固であることを示し、それが自信を感じさせ、じっさいに相手を動かすことになる。自分自身も、丹田のエネルギーとつながることによって、落ち着きと揺らがない自信が生まれる。
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