どうしてあの人たちはつながりたいのか?
本能タイプでわかる!上手な人との付き合い方-11
第4章: SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)と心の葛藤
タイムラインに表示される友人・知人のコメントや写真を見て、いちいち心が揺れ動き、内心穏やかでいられない。それが「SNS疲れ」の症状のひとつです。そうなると、思い切って「SNS断ち」したいと思う人もいるようです。
FacebookのようなSNSでは、そこに掲載される情報はポジティブなものが好まれ、ネガティブなコメントや強い意見、批判などはあまり好まれません。友人・知人のコメントや写真には「見たよ」という意味でも「いいね!」を押してあげるのが、半ば常識のようになっています。たとえ、「いいね!」と思わなくても、つきあいのために「適当に」押しているという人もいるでしょう。
SNSつながりで、心の葛藤を覚えることが多いのは、友人・知人の活躍している様子や幸せそうな姿が目に飛び込んできたとき、現実のリアルな生活が充実している人の、いわゆる リア充を目の当たりにしたときです。
たとえば、友達が恋人と楽しそうに過ごしているのを知ったとき、結婚した友達のウエディングドレス姿を写真で見たとき、裕福そうで立派な親や兄弟姉妹が一緒に写っている友達の家族写真を見てしまったとき、海外旅行先からアップされた友達の写真を目にしたとき、毎朝の写真つきコメントから、友達が仕事でバリバリ活躍している様子が伝わってきたとき、友達が有名人・著名人と交流があるらしいことがわかったときなどなど…。
友達の幸せそうな姿や輝いている様子が、なぜかあなたを落ち込ませます。友達が幸せそうであればあるほど、華々しく活躍しているようであればあるほど、私たちはわけのわからない焦燥感に駆られ、やがてうつうつとした気分になるのです。もう「見たくない!」と思うのですが、そんな心の内を他人に知られたくなくて、「いいね!」を押してみたりする…。「SNS断ち」をしたくなるのは、こういうときかもしれません。
“妬み”……あの人の幸せ(成功)が自分に欠けているものを思い出させる
そこにあるのは”妬み“の感情です。”妬み“は、自分以外の誰かが、何か望ましいものを手にしていて、それを受け入れ、楽しんでいるように見えるときに湧き起こる怒りを含む感情です。相手の存在が、自分に欠けているものを思い出させるときに、生じます。
「何かが欠けている」という感覚は苦痛を伴い、欠けていると感じているものへの切望を含んでいます。あなたが妬みを感じる相手が得ているものは、実はあなた自身がほしがっているものなのです。
それが欠けているからこそ、妬みの感情が湧いてくる。自分も同じものを手に入れていれば、その相手に対して妬みの感情を抱くことはないでしょう。
たとえば、あなたに素敵な恋人がいて、その恋人とうまくいっていれば、友達が恋人とどこかでルンルン気分で過ごしているのを知ったとしても、妬ましいとは思わないでしょう。
でも、あなたが自分の恋人に満足していなかったら、素敵な恋人のいる友人を妬むかもしれません。あなたが仕事でバリバリ活躍していたら、友達の成功は妬ましいものではなく、心から祝ってあげられるものとなるでしょう。
妬みを感じる相手は、自分と接点のない遠いところにいる人や自分とは違う世界に住んでいると感じている有名人やセレブに対してではありません。自分には届かないところにいる人たちに感じるのはたいていの場合、憧れに近いものです。それは「羨ましい」と口に出して言ってしまえるようなものです。
その一方、妬みは私たちが自分と近いところにいる人に対して感じるものです。少なくともあなたは、妬みを感じる相手のことを、自分と同等だと思っているはずです。その人が享受しているのに、自分にはそれが与えられていない……。
もし、あなたが有名人やセレブに対して、憧れではなく妬みを感じるようなら、それはあなたが「自分にもそれを手に入れる資格がある」と感じているからでしょう。
憧れは夢に近いところがあり、気持ちを落ち込ませるよりはむしろ、気持ちを優しくまろやかにするものです。
「妬み」と「羨ましい」は微妙な差異があります。「羨ましい」は口に出して言える感情ではないでしょうか。
友達に対して、「羨ましい」と感じることはあるでしょう。「羨ましい」という感情は、「妬み」と似てはいるものの、妬みほど暗い情念ではありません。「羨ましい」と口に出して言えない、自分の中だけにかくしておいて人に知られたくないのが、妬みです。
妬みの内容ですが、これはとてもやっかいで、単純に他人の幸せや成功だけが妬みの対象となるとは限りません。たとえば友達がSNSに、病気にかかり入院しているというコメントを残していたとして、みんながその友達にお見舞いや慰め、励ましの言葉などを書き込んでいるのを見たら、「病気になった相手を妬む」というようなことだってありえるのです。自分もそんなふうにみんなから、優しい言葉をかけてほしかった……。
妬みの感情はごく初期の幼児期の母子関係に基因しているといわれています。
妬みが強くなると、自分に妬みを抱かせる相手が得ているものを損なってやりたい、相手の幸せや成功を奪い取ってやりたいという気持ちに駆られます。妬みにとらわれると、相手の不幸や破滅をすら願うのです。
『アマデウス』という映画は、天才モーツァルトの才能を妬み、彼を毒殺しようとした(史実とは異なる)音楽家サリエリの苦悩が描かれています。まさに、「妬み」が主題の映画です。
あなたはそれほど激しい感情を抱いたことはないというかもしれません。でも、友人の幸せや成功のニュースに、「すごい」「おめでとう」「よかったね」などとコメントを残しながら、自分の顔がこわばっているのを感じたことはありませんでしたか。
そして、その友達にちょっとした不運や試練がもたらされたと知ったときには、これで帳尻が合ったというような、なんとなくほっとした気持ちになるのではありませんか。
おそらく、誰の心の中にも、ほの暗い部分があり、こういった感情が潜んでいるのです。SNSはそういった感情を刺激するところがあります。
リアルな現実とのつながりを取り戻す 呼吸をしよう
人を家に例えるなら、それは3階建ての家で、1階は本能、2階は感情、3階は思考の部屋になるということでした。前章までは、1階の本能の部屋についてお話してきましたが、ここでは2階・3階部分のお話をしています。
「妬み」は、2階の感情の部屋で湧き上がり、3階の思考の部屋へと流れ込んでいきます。そこで、妬みの感情は頭の中の空想と結びつき、「あの人は手に入れているのに、自分には与えられていない、それ」への切望がますます強くなっていきます。
妬み(envy)とよく似た感情に嫉妬(jealousy)があります。妬みは自分と相手の2者間で生じる感情ですが、嫉妬は自分を挟んで少なくとももうひとりの人物との関係を含んでいます。
とくに愛情に関して、当然自分のものだと感じていた愛情が、他の人に向かっていると知ったとき、沸き起こる感情が嫉妬です。
彼(彼女)には、他につきあっている人がいるらしい、SNSでやたらと親しげなコメントを残している、グループ写真の中で、肩寄せあうようにして写っている……。
そこから、あなたの想像力は、自分の預かり知らぬところで、2人が味わっているかもしれない“快楽”へと向かい、悶々とした気持ちで身もだえすることになるのです。
このとき、頭の中の空想はすでに妄想へと変わり始めています。
嫉妬は男女間に限りません。同性間、友達同士の間でも生じるでしょう。仲のいい友達が、自分以外の誰かと親しくしていると、何となく面白くないというようなとき、それは嫉妬かもしれません。
私たちはいったいどうしたら、このような感情から解放されるのでしょうか。あるいは、このような感情を克服していくことができるのでしょうか。
まずは、自分の心の中に湧き上がってきたその感情を認めることです。「これは妬みだ」「嫉妬だ」と気付けば、自分が何を求めているのかということも自覚できるでしょう。あなたが手に入れたくてたまらないものがそこにあります。
そのことを認めましょう。そして、現実に戻ってきてください。3階の頭の中の空想(=妄想)の世界から、1階の本能の世界へと降りてきて、そこでリアルな現実とのつながりを取り戻しましょう。
負の感情が湧いたとき、私達はともするとその感情にとらわれて、感情=自分のようになってしまいます。落ち込んだ気分イコール自分のようになってしまいます。
しかし、人は感情だけでできているのではありません。1階の本能の部屋には行動へと向かうエネルギーがあります。自分は今、何をすべきなのか、今やるべき課題に集中しましょう。
やりたくないことを嫌々やるのではありません。あなたが求めてやまないものを手に入れるため、それがもとより手に入らないものであるのなら、それに代わるものを手に入れるため、行動しましょう。
あなたがとらわれているのが嫉妬の感情なら、「自分は嫉妬しているのだ」と認めてしまうことです。あなたの愛する人にそのことを正直に伝えれば、相手は「なんだ、やきもちをやいていたの?」ということになり、そこからお互いの気持ちを確かめ合い、より絆が深まることもありえます。
自分の中から湧き上がる妬みや嫉妬の感情そのものを恐れる必要はありません。私たちはともすると、そういったマイナスの感情を否定し、その感情を心の奥に封じ込めてしまいがちです。そして、あたかもそんな感情はもとから自分の中になかったかのようにふるまうのです。
しかし、心の奥深くに封じ込められた感情は、なくなったわけではありません。それはずっとあり続け、わけのわからない焦りやイライラ、落ち込みとなってあなた自身を苦しめるでしょう。
無意識のうちに妬んでいる相手のことを悪く言ったり、足を引っ張るようなことすらしかねません。その人の前ではまるで無視するような態度を取ってしまうこともあります。
その行動はある程度、意識的に行われたとしても、自分がなぜそうしているのか、その動機のところが無自覚なままだと人間関係が決定的に悪くなってしまうということもあるのです。
むしろ、そういった感情を否定せず、その感情を名指すことが、精神的な健全さを保っていくことにつながります。
たとえばSNSで友達の活躍している様子や幸せそうな姿を見て落ち込んでしまったとき、「あっ、自分はあの人のことを妬んでいるのだ」と認めてしまえば、気持ちは少しスッキリするでしょう。相手に対する態度も、無意識のときとは違ってくるはずです。
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