2018年12月30日(日)
本能タイプでわかる上手な人との付き合い方ー13
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どうしてあの人たちはつながりたいのか?
本能タイプでわかる!上手な人との付き合い方-13


 得意は強み、強みは得意

 SNSでのコミュニケーションも、結局はその向こうとこちらにいるのは生身の人間。そこで生じる心の葛藤は、昔からの人間関係で生じていた心の葛藤と本質的には変わりありません。

 自分を知り、相手を理解し、上手に使っていければ、SNSはこの上もなく便利なツールです。それをどう使うかはあなた次第。SNSでつながる人のなかには、あなたと同じような感じ方・考え方をしている人もいれば、まったく違った感じ方や考え方をしている人もいるはずです。

 でも、お互いが、それぞれに快適な距離をとりながら、つながりを保ち続けようとしている、ポジティブなコミュニケーションツールです。

 この本では心の習慣を作り出す3つの本能に焦点を当て、普段、私達がどのようなことに関心を向けているのかを明らかにしてきました。自分がどんなことに苦手意識を感じているのか、またそれはなぜなのかということも明確になったかと思います。

 それぞれに得意・不得意がありますが、得意なところは大いに活用していきたいもの。それがあなたの強みになります。そして、苦手と感じているところは、それを得意としている人に助けてもらいましょう。

 その人のやり方を真似るもよし。くれぐれも、不得意なところだけに集中し、苦手意識のあるところを弱点と見なし、弱点を克服することだけにエネルギーを使わないでください。それでは、効率が悪すぎます。かえって、落ち込みが大きくなることすらあるでしょう。

 得意なところを自覚し、強みとし、その強みを生かしていきましょう。得意を生かすことで、前向きに行動でき、自分に対する自信もわいてきて、他人の価値観に従うのではなく、自分自身の成功と幸せにつながるのではないでしょうか。

 それは、また同時に、周りの人のためにもなると思います。





電子書籍のあとがき 

 この本でご紹介した3つの本能についての考え方は、エニアグラムの性格理論の中で言及されているものです。エニアグラムは心理学で扱われる範囲を超えた人間のスピリチュアルな面にアプローチするものですが、そのベースに置かれている考え方に、思考・感情・本能という3つの精神機能があり、本能の中にはさらに3つの側面があるという考え方があります。

 ここでご紹介したのは、エニアグラム教師や研究者によって受け継がれてきた、そういった考え方をベースにしたものです。

 エニアグラムとは、もともとロシア(アルメニア生まれ)の神秘主義者ゲオルギィ・イヴァノヴィチ・グルジェフによって発見された神秘的なシンボル図形のことをさしています。

 グルジェフの思想の影響を受けているといわれる南米出身の思想家オスカー・イチャーゾは、その図をもとに人間の陥りやすい感情的傾向を分析し、9つの性格タイプを見出しました。イチャーゾのエニアグラムは、一時期彼の弟子であった精神医学者のクラウディオ・ナランホによって体系化され、自己理解や自己探求のための道具として用いられるようになりました。

 3つの本能についての基本的な考え方は、すでにグルジェフの中に見られるものですが、イチャーゾとナランホにおいてより明確に、自己保存本能・性的本能・社会的本能の3つの特徴が説明され、ある本能が他より中心的に働いているとされてきました。

 これら3つの本能は9つの性格タイプそれぞれに対応することになるので、そうするとエニアグラムの9つのタイプには、それぞれ3つのサブタイプがあり、人間の性格は合計27のサブタイプに分類されることになります。しかし、その話はまた別の機会にいたしましょう。

 筆者はエニアグラムに関しては、米国エニアグラム研究所のドン・リチャード・リソ&ラス・ハドソン両師より直接のトレーニングを受け、学んできました。3つの本能について知ったのも、もう15年以上も前のことになりますが、リソ&ハドソン両師のトレーニング・コースにてのことでした。

 その後、筆者は3つの本能タイプについてのチェックリストを作成し、実際にどの本能を優位とするかはっきり違いが浮かび上がるものかどうか、筆者が主宰しているエニアグラムサロンへの参加者の方々に試していただきました。そして、何度も何度も繰り返し、いろんな方にチェックテストをやってもらい、そのつど参加者の声を聴きながら、リストに入れる項目や細かい文章の表現を直してきました。

 ですから、本書で紹介したチェックテストには、生の声が反映されています。これがリアルな場での分かち合いを通じて得た成果です。

 最後に、この場を借りて、すでに故人となられた米国エニアグラム研究所のドン・リチャード・リソ師とラス・ハドソン師に感謝をささげます。また、筆者が主宰する毎月のワークショップに参加してくださっているエニアグラム仲間に、心より「ありがとう」の言葉を送ります。(2015年)

 アーカイブ掲載にあたってのあとがき

 人とのつながり方も時代によって変化していくものですね。電子書籍用に原稿を準備した時点ではFacebookを中心にSNSでのつながりについて話を進めてきました。それから数年がたち、SNSの利用の仕方も以前よりさらに多様化しているように思われます。FBを中心にSNSの利用の仕方について語るのは、時代遅れになりつつあるのかもしれません。

 とはいえ、私たちの心の習慣を支えている本能の働きは変わりません。コミュニケーション手段やツールは変化しても、私たちの内面で起きていることやその内面を支える土台となっている変わらないものがあります。そのことについて、お伝えしてきました。

 ここまで読んでいただいた方に、感謝です。(2018年12月30日編集)

 

【参考図書】

『羨望と感謝』メラニー・クライン 松本善男訳 みすず書房

“Character and Neurosis: An Integrative View” Claudio Naranjo
邦訳:『性格と神経症』クラウディオ・ナランホ 春秋社

“The Wisdom of the Enneagram: The Complete Guide to Psychological and Spiritual Growth for the Nine Personality Types” Don Richard Riso and Russ Hudson

“The Spiritual Dimension of the Enneagram: Nine Faces of the Soul” Sandra Maitri

『奇蹟を求めて』 P・D・ウスペンスキー著 浅井雅志訳 平河出版社

『友達の数は何人? How Many Friends Does One Person Need?』 ロビン・ダンバー
 藤井留美訳 インターシフト


 ⇒本能タイプでわかる上手な人との付き合い方ー1
  本能タイプでわかる上手な人との付き合い方ー2
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